能登の誇り・白米の千枚田は今。震災を乗り越えた絶景と光の現地ルポ
白米 の 千 枚田の斜面に風が吹き抜ける。かつて地滑りや地震の傷痕が深く刻まれた日本海を望む急傾斜地は、今、力強い再生の息吹で満ちている。石川県輪島市を代表するこの棚田は、過酷な自然災害という試練を経てもなお、絶え間なく手入れを続ける人々の執念によって、かつて以上の誇り高い表情を取り戻しつつある。
急な斜面に重なり合う無数の小さな田んぼは、季節や天候によって刻一刻と表情を変える。日本海からの激しい潮風を受けながらも、地元の人々が先祖代々守り抜いてきた白米 の 千 枚田は、単なる美観にとどまらず、過酷な環境と共生してきた先人の知恵の集大成だ。
震災の亀裂から立ち上がる足音:千枚田が魅せる再生の現在地

2024年の能登半島地震、そしてそれに続いた豪雨。幾重もの災禍が石川県輪島市を襲い、大地を大きく切り裂いた。一時は棚田の法面が崩れ落ち、亀裂が走り、かつての美しい姿には二度と戻らないのではないかと危ぶむ声もあがった。しかし、2026年の現地で目にするのは、あきらめない人々のたゆまぬ足跡だ。
泥を払い、崩れたあぜを一つひとつ手作業で築き直す。完全に復旧していない場所もまだ残る。それでも、土を盛り、石を積み直す地道な泥くささこそが、能登半島のしぶとい復興精神そのものだ。目の前に広がる青い海と、斜面を美しく区切る小田のコントラストは、今や「再生のシンボル」として国内外から熱い視線を浴びている。
能登の伝統を守る誇り、世界農業遺産(GIAHS)としての価値

2011年、能登の里山里海は日本で初めて国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産(GIAHS)の認定を受けた。その誇り高き中核をなすのが白米の千枚田だ。大型機械が一切入れない小さな区画、平均してわずか数坪ほどの小田が1,000枚以上も重なり合う構造は、世界的にも極めて稀有な農業景観である。
水を引き、草を刈り、泥を捏ねる。傾斜地での米作りは膨大な作業量を強いる。それでも地域の人々が耕作を放棄しなかったのは、生態系の保護と食文化の継承という深い価値観が根底にあるからだ。世界的な環境意識が高まる現代において、自然と人間が調和しながら育んできたこの土地の価値は、国連食糧農業機関(FAO)の評価軸においても重要な輝きを放ち続けている。
地元の汗と全国のボランティア、白米千枚田愛耕会が繋ぐ絆

この広大な棚田を日常的に管理し、次世代へ引き継ぐ中心的役割を果たしているのが白米千枚田愛耕会だ。高齢化が進む地域において、愛耕会のメンバーは日々田んぼに足を運び、水を管理し、泥にまみれて土を育んできた。
震災後、全国から駆けつけたボランティアと白米千枚田愛耕会の会員が手を取り合い、土砂の撤去や田の修復作業が進められた。春の田植えや秋の稲刈りイベントには、オーナー制度を通じて支援を続ける都市部の住民も集う。機械の入れない急斜面ゆえ、作業はすべて人の手で行われる。足を取られながら苗を植え込む泥の温もりと、作業後に見上げる日本海の夕焼け。その体験は、参加者の胸に生涯消えない深い刻印を残す。
「まれ」の舞台から世界へ、土屋太鳳さんも見つめる復興の足跡
白米の千枚田は、2015年に放送されたNHK連続テレビ小説「まれ」の舞台として一躍全国にその名をとどろかせた。ヒロインを演じた女優の土屋太鳳さんは、撮影が終わった後もこの地と心を通わせ続け、災害時には温かい励ましのメッセージを寄せるなど、今も能登を見守り続けている。
放送から10年以上が経過した現在も、作品のファンや復興を応援したい旅行者が絶え間なく訪れる。さらに最近では、現地復興の息吹や四季折々の美しさを捉えた映像がYouTubeなどのプラットフォームを通じて世界中に拡散され、海外の旅行者からも強い関心が寄せられている。画面越しに届く波の音と風の匂いが、世界中の人々の足を輪島へと向かわせているのだ。
夜空を彩るあぜのきらめきイルミネーション:限られた期間の幻想美
秋冬の千枚田を彩る最大のハイライトが、期間限定で開催されるあぜのきらめきイルミネーションである。収穫が終わった10月下旬から翌年3月上旬にかけて、1,000枚を超える田んぼのあぜ道に、数万個のLED装置「ペットボタル」が隙間なく配置される。
日中の太陽光で蓄電されたライトは、日没とともに自動的に点滅を始める。15分ごとにピンク、グリーン、ゴールド、ブルーへと色を変えていく光の帯。静まり返った漆黒の日本海と、闇の中に浮かび上がる幾何学模様の灯り。強い潮風の中で息をのんで見つめるこの夜景は、この季節に訪れた者だけが得られる贅沢な独占体験だ。力強く土を耕す昼の顔とは異なる、幻想的で静謐な能登の表情がそこにある。
復興の地を歩くための訪問ガイド:アグリツーリズム産業の未来
石川県輪島市へ向かうアクセス環境は、復興の歩みとともに改善が進んでいる。金沢駅からの特急バスや観光ルートが順次再編されており、個人でレンタカーを利用する場合は最新の道路通行情報を確認した上での訪問が推奨される。現地にある道の駅「千枚田ポケットパーク」も営業を再開しており、棚田米を使った名物のおにぎりや地元の特産品を手に取ることができる。
千枚田を中心とした取り組みは、地域の農業と観光が結びついたアグリツーリズム産業の新たなモデルケースとしても期待を集めている。単に景観を眺めるだけでなく、土地の歴史や人々の営みに触れ、復興を直接応援する滞在型の旅。2026年、能登半島が提示する新しい旅のあり方は、訪れる一人ひとりの心に力強い希望を届けている。 (出典: 白米 の 千 枚田(Yahoo!ニュース))